勝負事でも商売でも気迫が大切です。もちろんみなぎっていることが大切で、それが同じ発音の「きはく」でも希薄では困りものです。
往々にして、自らの気持ちは体に現れます。自信のない向きは、どうしても体を丸くし下向きになるか、斜に構えたりしがちです。これは商売のみならず勝負事でも言える事です。
私は居合道場の門人です。もっとも、この頃忙しさにかまけて、道場へはご無沙汰してますが・・・。
この居合は真剣を使って稽古する武道です。元々は我に殺意を抱く者を迎え撃って切り殺さねばならない身を守る武術です。とは言え、殺人剣ではなく活人剣と言われます。
武芸を通じて自らの生きる道を探求すると言うことももちろんありますが、切り殺さずともその前に相手の敵意や殺意を削ぐという交渉が伴うからです。
その交渉は、言葉ではなく気迫で行えと教えられます。
その気迫の交渉は、三段階。
まずは、殺意を持って近づく相手に、刀に手をかけず、目力と気迫で「本気でやる気か!」と迫る。
それでも殺意を捨てないなら、刀に手をかけ、鯉口を切り、刀を抜きかけ、「抜くぞ!抜いたら最後、お互い無事では済まぬが、それでもやる気か!」と燃えるような気迫で押していく。
それでもまだ闘争の意があるのなら、一気に抜き放ち、大上段に振り冠り、「これで、命を頂くが、それでもよいか!」と鬼神の気迫で迫る。この交渉だけは一瞬です。それでも向かってくるというのであれば、躊躇なく真っ向から一刀両断。但し、逃げるものは負わず、自分の間合いに万が一入ったらという条件付きです。
こうならないために、居合の極意は「鞘の内」の状態で気迫勝ちせねばなりません。
真剣勝負とは言え、命のやり取りではなく、居合は、抜けば最後、必ず命をとるという信念の元に抜きつけます。このため、刀が鞘に納まっている状態で、相手の殺意や敵意を削ぐだけの人物力、胆力を養わねばならないと言うのが活人剣と言ういわれでもあります。
全てに共通しているのが気迫です。
居合ではその気迫はヘソにあると言われます。もちろん丹田という力が漲る源でもありますが、常に敵に正対し、敵にヘソを向けておけということです。
勝負への絶対の自信と気迫は、敵から一歩も引かず、真っ向からぐいぐいと押していくと言うものです。斜に構えてるような逃げ腰ではヘソの方向はは左右にぶれています。
つまりヘソを軸として半身が相手の間合いにそれだけ近づきます。さらに腰が引けて体が前傾していれば、上半身がそれだけ相手の間合いに近づきます。
真剣の勝負は、チャンバラ映画のようにバッサリやらなくとも、1ミリだけでも相手の刃先をかわし、逆に1ミリだけでも相手の体に切り込めれば勝負の流れが変わります。切り込んだ場所が動脈だったりすれば、致命傷です。
気迫の気迫さが体に現れると、死に至る確立がグンとたかくなるわけです。
現代では、このようなことはないと思いますが、剣聖たちの教えは、勝負事は言うに及ばず、仕事の上でも十分活かせますね。現代に蘇る活人剣なのかもしれません。
まことにもって温故知新とは言ったものです。
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