1.「世界から猫が消えたなら」川村元気・著
今年4月に発表される本屋大賞候補の作品。千歳空港に本屋があったのでブラッと入ると平積みにされていたので早速買って沖縄行きの機内で読んだ。厚い割には、会話調の文体が多いので2時間程で読める。この作家、これがデビュー作と言うが、1979年生まれの若手映画プロデューサーで、「告白」「悪人」「おおかみとこどもの雨と雪」等は彼の製作と知った。僕は3作共見たが中々面白くみた。さて、ある30才の男がガンで死を宣告される。そこに悪魔がやって来て、こう囁く。世界でひとつづつ地球上から消す度に君の命は一日延びると。彼はこの提案に乗る。先ず一つ目は携帯電話。成程・・・。次に映画と来た。最後に見る映画は初恋の人が勧める映画館で二人で見ることに・・・。この辺りは、本職だけあって興味深い。そして、悪魔が彼の飼い猫のキャベツ(猫の名前である)を見て、この世から猫を消そうと言いだす。さて、彼はどちらを選択するのか?猫の存在か、自分の死か。この作品は、文章力というより発想と構成の上手さで読ませる。たいしたもんだ。お勧め!
2.「仕事の見える化」 長尾一洋・著(中経出版)
「見える化」と言うことばは、ビジネスでは良く使われる。さて、具体的にというと、理論上は色々言えても、全社的に実行するのは難しい。この本の中で、日報をスマホかPCのメールでとの提案があり、これは試してみる価値がありそうだ。
3.「男の貌(かお)」 高杉良・著(新潮新書)
東京へ出張に行ったおり、時間があったので浜松町駅構内の書店で買った4冊の新書の内の一冊。帰りの飛行機の中で一気に読んだ。経済小説家の著者が、過去に取材を通じて出会った経営者たちについて書いた評論。今の日本にはリーダー不在ではという指摘。リーダーには、勁(つよ)さと、優しさが不可欠であると。つよさの漢字にこだわりがある。俎上に上がるのは、中山素平、森和夫、八谷泰造、坪内寿夫さんやその他の経営者の面々。ビジネスマンには面白い。
(5月)
4.「変わる力」 鈴木敏文・著(朝日新書)
今年の5月30日発行とある。東京出張の折、丸の内のオアゾ内の丸善で手に取り購入したのが5月17日だ。一倉OB会の先輩である市川さんの紹介でイトーヨーカ堂の前専務のYさんが、鈴木会長には役員が束になっても太刀打ちできない凄い経営者だと常に語っている。当時の伊藤ヨーカ堂の役員の反対を押し切ってアメリカのセブン・イレブンとライセンス契約を結んだのが40年前の1973年。それが、今や売上高3兆円を超えセブン・アイグループの利益の7割を稼ぎ出す。以前Y専務と会食した時に、サラリーマンなのに鈴木さんは凄いデスねと言うと、セブン・イレブンは鈴木さんが実質的に創業者だヨと。その鈴木会長の経営の理念である「仮説-実行-検証」を徹底的に実行すると、結果は後からついてくる事例が具体的に述べられている。今回東京でP・D・C・Aのセミナーを受講する日にこの本を手に取ったのも何かの縁。
(6月)
5.「知らないと恥をかく世界の大問題4」 池上彰・著(角川新書)
人気ジャーナリストの人気シリーズ第4冊。この人、小生と同い年で川端さん(元NHK沖縄局長)の先輩にあたる。NHK時代は夕方の「週刊こどもニュース」のお父さん役で人気。
2005年にフリーになり、民放で世の中のニュースを解り易くズバリ解説して人気になった。今は、取材、勉強の為特別番組にしかTVに出ないが良い事だ。TVに出すぎると馬鹿になる…。
今年の5月25日発行なので安倍政権のアベノミクスを含め世界の大問題が解説され勉強になる。
小生は、この手の本は飛行機の中で読む。
6.「七つの会議」池井戸 潤・著(日本経済新聞出版社)
10万部突破のこのベストセラーの本を買ったのは、もう半年も前の事だ。僕は数冊の本を同時進行で読む癖があるので、日曜日に久しぶりに手に取り一気に読んだ。大手メーカーの子会社でエリート課長が古参社員に“パワハラ”で訴えられた。しかし、その裏には、コスト削減の為、商品であるネジの強度偽装事件があった。会社の利益、本人の出世の為には嘘が許されるのか。サラリーマンは真実を貫き通す事はできるのかを問うた400ページもの長編。大企業ではこの手の話は日常茶飯事なのであろうか。
7.「知らないと恥をかく世界の大問題」池上 彰・著(角川新書)
先日、このシリーズのNO.4を読んだばかり。早く帰宅して、未読の図書コーナーを見るとこの本があるではないか。2009年11月発行で、日本は民主党政権に変わり、アメリカではオバマ氏が再選された後だ。3
年半前の本なので、今となっては結果が分かっている事もあるが、成程大ベストセラーになった第1弾だけあって分り易い。
(7月)
8.「住宅ローンは借金ではなかった」青山 茂生・著(日本建築出版社)
博多での営業セミナーに出た時の講師の著作。岐阜県で100年続く製材所の3代目。しかし、倒産の危機で工務店経営に転身。その頃、知り合ったコンサルタントの中村辰巳氏の指導を受け業績が急成長。その手法が独特な資金計画にあり。面談3回目で契約に持っていくとは驚異的だ。この本の定価は税別で1300円、中村氏の著作が1400円。セミナー後に2冊セットで1万円というので少し胡散臭いかなとも思ったが具体的なフォーマットでも入っていればと思い購入したが、それも無く外れ。第一、この出版社は全く同じ内容の本を、各地の工務店経営者を著者として出版する手法で工務店経営者から多額の出版料を貰い発行している本が多い。まあ、著者の青山社長が真面目に実践しているのは事実なのでその姿勢を見習うとするか。
9.「3色ボールペンは使うな」 中村 辰巳・著(アスペクト)
別に3色ボールペンが悪いのではない。住宅の契約の時に、そういう安物のボールペンで契約書に署名をするような営業マンの居る住宅会社は駄目ですヨという意味。それも一理ある。
小さな住宅会社が業績を伸ばす66のポイントについて説明をしているが、どれも基本的なことで、特別に目新しい点はない。
(8月)
10.「そうだ!葉っぱを売ろう!」横石 知二・著(ソフトバンク)
沖縄経済同友会で例会の講師に招いた時、直接お話をする機会があったが、徳島県上勝町という人口2000人余りの小さな町で、70代80代のおばあちゃん達が「葉っぱ」を売って年商約3億円だというから驚きだ。その仕掛け人がこの横石氏だ。ビジネスは眼のつけ所で色々な付加価値をつけられるものだと感心。しかし、そこに到る迄の著者の苦労は並大抵では無かった。世の中には凄い人がまだまだ沢山居るなアー。
11.「2013年の中国を予測する」宮崎正弘、石平・著(WAC)
去年の秋、東京で神谷さん(神寛、館林)と会食した時に貰ったが、時々眼を通しやっと読み終えた。今の新体制がスタートする前の予測だが大概はその通りになっている。中国社会の崩壊が始まっているという論調は今に始まった事では無いが、日本と沖縄のマスコミはオスプレイは問題視するが、中国が尖閣及び沖縄近辺の海峡ラインを侵犯している事は余り取り上げない。中国という国家の危険性を声を大にして叫ぶべきだ。特に沖縄県民は。彼等の国に正義は無いし、国民にマナーは欠如している。
(9月)
12.『「成功」と「失敗」の法則』 稲盛和夫:著(致知出版社)
9月14日(土)「致知35周年記念講演&パーティー」に出席した時、会場に多くの書籍が販売されていて、講演のメイン講師が京セラ名誉会長の稲森和夫氏。27歳で京セラを創業、52歳で第二電々(現KDDI)を起業し、各々1兆円、4兆円、両社合わせて5兆円の企業へと躍進させた。そして最近では、経営破綻したJALを会長として僅か3年弱で再上場を果たし、世界NO.1の高収益エアライン会社へと再生した。その稲盛会長が、小学校の頃から今に到る迄に、恩師を初め色々な方に救われたと感謝している。そういう方達との出会いを70分に渡り講演された。この本は、平成20年9月に発行され、昨年で第11刷。僅か130頁程で、字も大きくあっという間に読める。しかし、その言わんとする点は深く重い。
13.「小さな修養論」 藤尾秀昭:著(致知出版社)
9月14日(土)に「致知創刊35周年記念講演会&パーティー」に出席した際、手土産に頂いた。著者は「致知」の社長兼編集長であり、雑誌「致知」に連載した原稿をまとめて編集したものである。古今東西、特に日本の先人達の「ことば」を取り上げ、修養こそ人生をひらくと説く。小さな本で、短い時間で読めるが、人間力を磨くには簡単に読めば良いというものでは無い。子を持つ親は、暗唱する程読み込む必要があるのかもしれない。
(10月)
14.「永遠の0(ゼロ) 百田尚樹:著(講談社文庫)
この本は2006年8月に出版。小生が文庫版を書店にて購入したのが、今年初め頃。出張で大阪、つくば市と移動距離が長いのでと、やっと読む気になり鞄に入れた。那覇から関空行きの飛行機、そして新大阪から東京行きの新幹線、つくば市への列車の中で、涙無くして読む事は出来なかった。589頁の大作だが、著者の処女作だと知り驚き。放送作家出身と言えど、小説が書けるものでは無い。
物語は現代。26歳の健太郎は司法試験を4回落ち、人生の目標が見つからない。そんな時フリーライターである四歳上の姉からアルバイトを頼まれる。二人の祖父の事を調べるから手伝えと言うのだ。祖母は戦後、再婚して6年前に亡くなった。二人にとって、祖父は戦争が終わる直前に無くなったので会った事も無い。再婚したおじいちゃんに可愛がられ、思い出した事もなかった。
何を今更と思うが、戦争中の祖父の事を覚えている11名の戦友を尋ねて取材する。すると驚愕する事実が彼等の口から次々と語られるのだ。
その構成の上手さ!
戦争の為に、死なねばならなかった男達の無念さ、そして残された家族の悲痛。しかし、海軍の上層部は自らの保身に浸り、兵隊を、国民を死なせた責任から逃げる。真珠湾攻撃にも参加した零戦の名パイロットであった祖父は、軍国主義に対して、妻と娘に会うまでは死ねないと必死に生き残ろうとするが、何故、最後に特攻として散っていったのか。
ラストのどんでん返しに、又涙である。日本人よ、この物語を読み給え!彼らの清く凛とした生き方があればこそ、今、我々が存在している。新作の「海賊と呼ばれた男」も読まなくては!
15.「サービス付き高齢者向け住宅経営成功の秘訣25」 南部淳:著(幻冬舎)
愛知県で実際にサ高住を経営している著者の実務書。コンサルタントと違い、実務に沿って書かれてあるので参考になる。空港での待ち時間に読んだ。
16.「リピーターになる時期は予測できる」 橋本陽輔:著(ビジネス社)やずやの大番頭である西野博道さんが開発した「顧客ポートフォリオ・マネジメント理論」から、OBのお客様がリピーターになる時期は予測できると説明。通販業界から、美容院や歯科医院迄この理論を使う店が増えて来ているとの事。新築住宅では、そうはいかないが他業界から少しでも参考になればと、出張中の飛行機で読んだ。
17.「黄金のバンタム」を破った男 百田尚樹:著(PHP文庫)
「永遠のO」が余りにも面白かったので、出張用に買った。白井義男に次いで19才で日本人として二人目の世界チャンピオンになったファイティング原田の物語である。しかし、前半は白井を含め、戦後の日本人ボクサーを語る。リング上の戦いのみならずその生き様、人生模様迄我々は知る事ができる。僕が子供の頃は確かにTVのゴールデンタイムはボクシングの実況中継が多かった。原田の世界戦は、TVの前で熱狂して応援した事を覚えてる。ボクシング史上バンダム級で史上最強と言われたブラジルのエデル・ジョフレは生涯二度しか敗れていない。その二度とも原田である。バンダム級からフェザー級に転向し、日本人として初の二階級制覇、その当時の世界チャンピオンは8階級でひとりだから、たった8人しか居ない。今の様に団体が乱立し、70名以上も世界チャンピオンが居る時代とは価値が全く違う。特に、大阪の三兄弟のようにTV局に作られたようなチャンピオンとは比べにもならない。戦後日本が敗戦から立ち直り、ただひたすらに前を見つめ努力した時代。ファイティング原田を通じて、日本人の心の素晴らしさを知ったのが当時の日本人だ。この作家が書くと、ノンフィクションもここ迄面白くなるのだ。
(11月)
18.「中小企業が繁栄する原則を発見しました!」 市川俊夫:著(にじゅういち出版)
宇都宮のサ高住視察に参加した際、宮沢社長に注文した。出張の際に読んだ。
税理士の先生が書いたビジネス本。
(12月)
19.「歩きながら 考えよう」 安藤忠雄:著(PHP研究所)
1941年大阪生まれの、世界的な建築家の安藤さんは、若い頃は日本や世界各地を歩くのが好きだったようだ。勿論、お金が無かったせいもある。
その安藤さんが語る、建築論に人生論。高卒で建築も独学。両親は居なくて育てたのは祖母。安藤さんが建築の仕事をやりたいと申し出た時の祖母のことば。「人に迷惑をかけない。責任を持って約束を守る。あきらめずにやりとげる」それが3つの約束。この祖母のおかげで世界の安藤忠雄が生まれた。
(1月)
1.「ロスジェネの逆襲」池井戸 潤:著(ダイヤモンド社)
正月休みの間に昨年の流行語大賞にも選ばれた「倍返し」のTVシリーズ「半沢直樹」のDVD全巻(1~6)を借り、一気に観た。面白い!45%以上の最高視聴率の事だけあるワイと感心。この作家の作品は去年「七つの会議」を読み、それも中々面白く読んだ。さて、この「ロスジェネの逆襲」はTVのラストから続く、銀行を救った功労者であるはずの半沢が頭取から直に下った辞令はあろうことか証券会社への出向である。その続きがこの3弾。IT企業のM&Aのアドバイザーをめぐって親会社の銀行と戦う派目になる。IT企業の若手とベテラン経営者の戦い。そこに入り乱れる銀行の人事。半沢直樹の活躍に胸がスッとする。382頁もあるが二晩で一気に読んだ。
今年の「読初(よみぞめ)」だ。
2.「下町ロケット」池井戸 潤:著(小学館文庫)
半沢直樹シリーズが大ヒットした著者の、2011年第154回直木賞受賞作の文庫本。480頁を二晩で読ませる筆力は流石だ。宇宙開発機構のロケットエンジニア佃は、ロケット打ち上げ失敗の責任を取り家業の町工場の後を継ぐ。持ち前の技術を活かした製品開発力で、売上を3倍の100億円に伸ばす。そんなある時、上場会社の取引先から特許侵害で訴えられ、敗けた場合には数十億円の違約金で会社は間違いなく倒産する。絶対絶命の窮地は元妻が紹介してくれた有能な弁護士のおかげで逆に違約金を貰う事になる。それもつかの間、国産のロケットを開発する日本を代表する大企業帝国重工から、佃が開発した特許技術を売れと迫られる。佃にとっては大金が入るので社員の大半は喜ぶが、佃は技術者としての夢をかけて自社でロケット部品を製作する道に社運を賭ける。しかし、賛成派と反対派で社内が割れ不穏な空気が…。夢を追うか、社員の待遇を優先するか。中小企業が大企業に技術で勝てるのか。ラスト、種子島宇宙センターから佃の開発した部品を使用した国産ロケットが飛んで行くさまは感動する。
3.「売る力・心をつかむ仕事術」鈴木敏文:著(文春新書)
大手スーパーイトーヨーカ堂に30才で中途入社して、サラリーマン乍らセブン・イレブンを実質的に創業した鈴木氏が語るその30の秘訣。その29番目に“「当たり前」をつづけて「非凡化」する”という項目があった。偶然だが、弊社の今年のテーマは「私は当たり前のことを、きちんと実行します!」(平凡×継続×徹底=超非凡)と宣言した。思いつく事は同じでも、鈴木会長と小生の違いはその徹底さだ。小生もこの「徹底」を胸に刻み、必死で仕事に取り組まねばと教えられる。
(2月)
4.「ようこそ、わが家へ」池井戸潤:著(小学館文庫)
銀行マンの活躍を描く事の多い著者の変わったタイトルだと思って書店で手にした。主人公は冴えない50代のオジさん。銀行取引先に総務部長として出向中。ある日のこと、自宅に帰る山手線の代々木駅で、列を無視して電車に乗り込んできた30代らしき男を、勇気を出して叱りつける。ところが、このことが彼の家族を巻き込むストーカー事件に発展していくのだ。会社では営業部長が関わっているかと思われる不正を発見して社長に報告するが、社長は営業部長を信頼して銀行からの出向者である彼を疎んじ、銀行に戻すように裏で交渉する始末。この二つを大きな軸として物語が進むが、妻と息子と娘の協力と理解を得て家族が団結して犯人を突き止める経緯は嬉しく喜びでもある。タイトルの「ようこそ、わが家へ」はこの辺りから来たのか。銀行マンとしての誇りを取り戻した彼が不正問題を解決するのも冴えないオジさんの心意気に拍手。